トップページ > ブログ・Q&A > ブログ・アーカイブ > 上智大学ロースクール(著作権講義)

上智大学ロースクール(著作権講義)

2010年07月16日22:21 ロースクールでの著作権講義(損害賠償額の算定)
2010年07月16日11:23 ロースクールでの著作権講義(レコード製作者とは)
2010年06月28日20:48 ロースクールでの著作権講義(実演家の権利)
2010年06月24日19:53 ロースクールでの著作権講義(著作者)2
2010年06月24日18:49 ロースクールでの著作権講義(著作者)
2010年06月14日20:48 ロースクールでの著作権講義(キャラクターの著作物性)
2010年06月04日23:23 ロースクールでの著作権講義(間接侵害)2
2010年06月03日22:01 ロースクールでの著作権講義(間接侵害)1
2010年06月01日16:49 ロースクールでの著作権講義(余談)
2010年05月28日21:14 ロースクールでの著作権講義(消尽)
2010年05月21日17:55 ロースクールでの著作権講義(譲渡権・貸与権)
2010年05月14日15:51 ロースクールでの著作権講義(応用美術)
2010年05月12日19:42 ロースクールでの著作権講義(編集著作物)
2010年04月30日12:55 ロースクールでの著作権講義(不法行為との関係)
2010年04月27日11:02 ロースクールでの著作権講義(創作性と新規性)
2010年04月19日14:59 ロースクールでの著作権講義(第3回目-創作性の高低Ⅰ)
2010年04月15日11:40 ロースクールでの著作権講義(第2回めの補充)
2010年04月09日15:38 上智大学ロースクールでの授業開始にあたって


2010年07月16日22:21 ロースクールでの著作権講義(損害賠償額の算定)

著作権侵害も不法行為なので、損害賠償請求については、民法709条の適用をうけます。その場合、損害賠償額は、逸失利益の額ということになります。逸失利益は、侵害行為がなかったら増加していたであろう利益なので、
【侵害行為がなければ権利者が販売できたであろう数量×権利者の単位数量あたりの利益額】
によって計算されます。

この場合、「侵害行為がなければ権利者が販売できたであろう数量」を立証することは困難です。

そこで、著作権法は、損害の立証困難を救うために特則を置いています。

(1)114条1項による計算
【侵害者の譲渡数量×権利者の単位数量あたりの利益額】
を権利者が受けた損害の額とすることができる。ただし、その数量を権利者が販売できない事情があれば別。

(2)114条2項による計算
侵害者が侵害行為により受けた利益を、権利者が受けた利益の額と推定するので
【侵害者の譲渡数量×侵害者の単位数量あたりの利益額】。

(3)114条3項による計算
【侵害者の譲渡数量×単位数量あたりのライセンス料相当額】。

(4)114条の5
損害が生じたことは認められるが、損害額を立証するために必要な事実を立証することが困難なとき、裁判所が相当な損害額を認定する。

そこで、(1)(2)(3)どれを使うかですが、ここで、(1)(2)を利用するためには、権利者みずからその著作物を販売している必要があるか、という問題があります。114条1項は、権利者に販売その他の行為を行う能力があることを前提としています。また、2項も、権利者みずからその著作物を販売できたであろうということが前提になっていると解されます。そこで、通説的見解や主要な判例は、必要説を採用しています。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年07月16日11:23 ロースクールでの著作権講義(レコード製作者とは)

著作権法によると、レコード製作者は、「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と定義されています(2条1項6号)。

ところで、レコード業界では、以下のように、さまざまな形態でレコード(原盤)の制作を行っています。
(1)レコード会社が原盤制作を行う場合。
(2)レコード会社以外の者(主にプロダクション)が原盤制作を行い、レコード会社に原盤に対する権利を譲渡する場合・・・この場合、レコード会社とプロダクションとの間に原盤譲渡契約が締結される。
(3)プロダクションが原盤制作を行い、レコード会社にライセンスする場合
・・・この場合、レコード会社とプロダクションとの間に原盤供給契約が締結される。
(4)レコード会社とプロダクションなどが共同で原盤を制作する場合・・・この場合、レコード会社とプロダクションとの間で共同原盤制作契約が締結される。

そうすると、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」は、(1)ではレコード会社、(2)ではプロダクション、(3)ではプロダクションとなりますが、問題は(4)の場合です。

(4)のように、共同原盤を制作する場合、プロダクションとレコード会社で費用を分担して、レコード会社が原盤制作を行うという場合があります。その場合、費用を負担しただけのプロダクションは、レコード製作者になるのか、という問題があります。

The BOOM事件(東京地裁平成19年1月19日判決)は、レコード製作者について、「物理的な録音行為の従事者でなく、自己の計算と責任において録音する者、通常は、原盤制作時における費用の負担者がこれに該当するというべきである」といい、共同原盤の場合、共同してレコード製作者の地位を取得すると判断しています。

レコード製作者の定義に関する判決の解釈は、著作権法の定義とはかなりかけ離れていると思います。ただ、レコード製作者の権利を保護する趣旨自体が、産業政策なので、レコード製作者の定義を強行規定と解する必要はなく、当事者が別段の定めをした場合、当事者の意思を優先すればよいと思います。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年06月28日20:48 ロースクールでの著作権講義(実演家の権利)

実演家(アニメ声優)の権利に関して問題となった裁判例として、アニメ声優事件があります(東京高裁平成16年8月25日判決)。

アニメ声優らは、音声制作会社との間で出演契約を締結し、アニメ作品に出演していました。そのアニメ作品は、後日、ビデオ化され、販売されたのですが、アニメ声優らはビデオ化使用料の支払を受けていませんでした。このケースにおいて、著作権法の規定にしたがった場合、アニメ声優は、アニメ作品のビデオ化の際に、ビデオ化使用料の支払いを請求できるでしょうか。

実演家は、録音・録画権(著作権法91条)があります。この録音および録画には、音や映像の固定物を増製することも含みます(著作権法2条1項13号および14号)。ここまでなら、声優らは、アニメ作品をビデオ化した場合にも、ビデオ化使用料をとれそうです。

しかし、91条2項は、映画の場合に録音・録画権を制限しています。つまり、実演家の許諾を得て、映画の著作物に録音・録画された実演については、実演家の録音・録画権は及びません(ただし、サウンドトラックのようなものには及びます)。そのため、アニメ声優が、アニメ作品に出演することを承諾してしまえば、以後、そのアニメ作品がビデオ化されても、ビデオ化使用料は請求することはできません。実演家の権利が、最初の実演の録音・録画にしか及ばないので、これを「ワンチャンス主義」と呼んでいます。

この事件で、声優らは、著作権法の規定によってビデオ化使用料の支払を請求しているのではなく、出演契約においてビデオ化使用料の支払の合意があったと主張し、ビデオ化使用料を請求しています。

裁判所は、出演契約が、ビデオ化使用料の支払いを前提として締結されたものと判断して、声優らの訴えを認めています。

この事件、個人的には、裁判所の知財専門部で審理されなかったのが声優らにとってよかったのではないか、と思います。おそらく知財部では、ビデオ化使用料の支払いが業界慣習になっているかどうかが重視されると思いますが、業界慣習であるというには疑問があるからです。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]



2010年06月24日19:53 ロースクールでの著作権講義(著作者)2

ある著作者が、二次的著作物の原著作者になるか、共同著作者になるかについては、あまり、そのような切り口では論じられていないように思います。

その点については、スマップ大研究事件でも書きましたが、キャンディ・キャンディ事件(最高裁平成13年10月25日判決百選第4版56事件)も同じ問題があります。

キャンディ・キャンディ事件は、問題となったコマ絵、表紙絵、原画が小説形式の原稿の二次的著作物であり、小説家である原告の権利が及んでいると判断しています。なお、ここで、コマ絵は漫画の一コマを、表紙絵とは雑誌の表紙に掲載されたイラスト、原画とは漫画とは関係なく後日書き下ろされたイラストを意味します。

私は、「キャンディ・キャンディ」が原稿の二次的著作物であるという判決の結論に違和感を覚えます。

たしかに、地裁が認定するように、「キャンディ・キャンディ」は、連載の各回ごとに原告が小説の形式で原作原稿を作成し、漫画家がこれを漫画化するという手順で制作が行われたものです。

ところで、著作権法は、一部分ずつを逐次公表して完成する著作物については、最終部分の公表の時が、保護期間の算定基準となる「公表の時」であると規定しています(56条)。そうすると「キャンディ・キャンディ」のような連載物は、最後まで完成した連載全体を一個の著作物と考えるべきなのではないかと思います。そうすると、一個の著作物を共同で創作したと考えられます。

また「キャンディ・キャンディ」の原稿自体をつなげてもひとまとまりの小説にはならないことや、かならずしも漫画が原稿に忠実ではないことなどからしても、漫画を共同で創作したと考えるべきではないかと思います。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波朋子

[▲上へ]


2010年06月24日18:49 ロースクールでの著作権講義(著作者)

スマップ大研究事件(東京地裁平成10年10月29日判決)は、雑誌のインタビュー記事の著作権侵害が問題になった事件です。この事件での争点は、原告である雑誌の出版社の著作者性とスマップのメンバーの著作者性です。

雑誌社については、法人著作(15条)として、著作者性が認められています。

問題は、インタビューに答えたスマップの著作者性です。この点、上記判決は、スマップメンバーの著作者性を否定しています。しかし、インタビューに答えた場合でも、その内容に創作性があれば、創作的表現として、著作物性が認められると考えられます。

その場合、スマップメンバーの立場は、記事の原著作者になるか(記事は二次的著作物)、記事の共同著作者になるかが問題となります。

共同著作物となるためには、まず、(1)創作的な貢献をしていることが必要です。これに関しては、実際に創作行為自体に関与していることが必要かどうかという点に争いがあります。さらに、(2)共同創作の意思が必要です。これに関しては、当事者間の意思の連絡が必要かどうかという点に争いがあります。加えて、(3)分離して個別に利用することができないことが必要です。これに関しては、物理的に分離不可能であることを要するかどうかという点に争いがあります。本件で、スマップメンバーを共同著作者とするためには、(1)と(2)の争点をクリアしなければなりません。

この点、インタビューが創作的表現であれば、それを原著作物と考えることができます。ただ、スマップの原著作者性を裁判で主張するには、口述したものが残っていないと難しいかもしれません。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子


[▲上へ]


2010年06月14日20:48 ロースクールでの著作権講義(キャラクターの著作物性)

漫画と漫画のキャラクターとは、区別して考える必要があります。

漫画そのものは、イラストと台詞などで構成された具体的な表現として、美術の著作物に該当します。

これに対し、漫画のキャラクターは、「原著作物中の人物などの名称、姿態、役割を総合した人格とでも言うべきものであって、原著作物を通じ又は原著作物から流出して形成され、原著作物そのものからは独立して歩き出した抽象的概念」と定義されています(大阪地裁昭和59年2月28日判決ポパイマフラー事件)。

つまり、キャラクターは、漫画から一人歩きしている抽象的概念であり、漫画の具体的表現ではないので、著作権法によって保護される著作物ではないという結論になります。

では、誰かがキャラクターを真似たときに保護されないかというとそうではなく、前掲大阪地裁判決は、「その図形が原著作物における人物・動物などの特徴を備え、一見して両者が同一人の人物・動物を表現したとみられる場合にも、これをなお原著作物の複製行為に含まれる」と判断し、漫画の複製になりうるとしています。

なお、ポパイ・マフラー事件は、商標権者である原告が、ポパイの著作権者から許諾を受けた正規ライセンス品を仕入れ販売している被告を商標権侵害で訴えた事件です。最高裁は、イラスト入りの商標については、商標法29条の適用により、原告の商標権の行使を認めず、文字商標については、商標権侵害の主張を権利濫用と判断しました。


弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年06月04日23:23 ロースクールでの著作権講義(間接侵害)2

ロクラクⅡ事件知財高裁判決(知財高裁平成21年1月27日判決)は、カラオケ法理の適用範囲について、これまでの裁判例の流れにクギを指す判断をしている。

つまり、カラオケ法理は、カラオケ経営者が、カラオケ装置などを据え置いて、従業員がカラオケ装置を操作し、客に歌唱を勧めて歌唱させるなどして、店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益を上げることを意図していたとの事実関係を前提に、「演奏(歌唱)の形態による音楽著作物の利用主体を当該スナック等を経営する者らと認めたもの」であり、これは、ロクラク事件のようなテレビの視聴を可能とする場合とは事案を異にすると述べている。

つまり、カラオケ経営者が演奏行為を行っているというように、演奏行為を規範的に解釈する理論であると判断している。確かに、自ら演奏行為を行う者でなく、演奏行為を仕切っている者を演奏行為の主体と解釈することには問題はなさそうである。

そうはいいながら、上記ロクラクⅡ事件は、テレビ視聴を可能とするサービスを検討するにあたって、やはりカラオケ法理の判断基準を用いていると考えられる。上記判決は複製権侵害を否定したが、カラオケ法理の基準を当てはめると、直接利用行為が私的使用のための複製として適法であっても、サービスを提供する者については、複製権侵害が肯定される可能性がある(原審判決は複製権侵害を肯定)。

結局、この問題は、立法的に解決するしかないと思われるが、受験生にとってはどのような見解に乗ればよいのか、悩ましいところである。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年06月03日22:01 ロースクールでの著作権講義(間接侵害)1

間接侵害は、著作権の勉強の最大の難所かもしれません。数々の裁判例があり、しかも、収拾がついていない状態です。

問題の出発点が、カラオケ法理。カラオケ法理をカラオケでの演奏権侵害に適用する限りでは、一応納得できます。カラオケ法理の要件である(1)管理、(2)利益を、公衆送信権侵害にまで拡大したところから、わけがわからなくなっていきます。ということで、判例の検討をしていきます。

ヒットワン事件(大阪地裁平成15年2月13日判決)
裁判所が、通信カラオケリース業者に対して、カラオケ店舗がカラオケ楽曲データを使用できないようにする措置をとるように命じた事件。
原告は、(1)カラオケ法理にもとづき被告が著作物の利用主体であることを理由として使用禁止措置を求め、かつ、(2)被告が著作権侵害の従犯であるとし著作権法112条1項は従犯にも適用できるとの理由で使用禁止措置を求めています。
この判決は、差止請求の対象になる従犯について、侵害主体に準じる者と評価できる幇助行為を行った者としています。その上で、通信カラオケリース業者は、侵害主体に準じる者と評価できる幇助行為を行っていると判断し、使用禁止措置を命じています。
侵害主体に準じる者であるかどうかを論じるにあたって、判決は、カラオケ法理が要件とする管理支配や利益を検討して、管理支配を行っていることも利益をあげていることも認めています。しかし、それなら、単に利用主体と判断していいのでは?とも思えます。通信カラオケリース業者を正面から利用主体と判断することはさすがにちょっと変、という意識が働いたのでしょうか。最後は、従犯であることを前提に使用禁止措置を認めるところに落ち着いています。

個人的には、著作権112条1項を従犯にも適用して差止請求を認めることには賛成ですが、こんな要件をかぶせるなら、わざわざ112条1項を持ち出す意味がないように思います。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年06月01日16:49 ロースクールでの著作権講義(余談)

司法試験なんて随分と遠ざかっていましたが、ロースクールに関係するようになり、旧司法試験との違いに驚くばかりです。行政法が必須になっていたり、一気に択一・論文を受験するようになっていたり。試験も過酷ですが、やはりロースクールという制度自体が過酷です。

22歳で法学部を卒業するとして、既修なら24歳でロースクールを卒業、1回で合格すれば25歳で司法修習、26歳で弁護士というのは、夢の理想コース。

法学部卒業後、未修でロースクールに入り25歳で卒業、5年間のうちに3回受験ができるとして30歳まで粘り、そこで合格したら31歳で司法修習、32歳から弁護士。その間、収入がなく、学費のための借り入れや、司法修習が貸与制になれば、まったく弁護士になることには魅力がない。そもそもこれではお金持ちしか弁護士になれない。弁護士になれればいいとして、三振したときは他に行き場がない。

米国のロースクール制度の真似をしても、米国と日本は企業風土が違う。あちらは終身雇用もなくキャリア・デザインが自由なので、別のキャリアからわりと気軽に転身でき、試験もさほど難関ではない(らしい)。他方、日本は、大手企業にはいればやはり同期との競争に生き残ることが求められ、三振後の中途採用は難しいように見える。

フランスでは、弁護士を目指す人向けに大学4年次から履修できる修士コース(キャリエール・ジュディシエール)があり、そのコースに進んで受験することも、他の修士コースに進んで受験することも可能。かなり柔軟である。

私は、日本のロースクールは、もっとフレキシブルであってもいいのでは、と思います。ロースクール卒でない人に受験資格を与えても、結果さえだせれば問題がないはず。そうするとロースクールは予備校になってしまいますが。現在の制度は、若い人への負担があまりにも重すぎます。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年05月28日21:14 ロースクールでの著作権講義(消尽)

消尽理論は、知的財産権法全般に関係します。著作権法では、著作権法26条の2第2項に定められています。

同条項は、1号~5号までいろいろ書かれていますが、簡単にいうと、一旦適法に譲渡された著作物は、その後自由に譲渡することができるということです。一旦流通に置かれたものを再度譲渡しようとするときに、いちいち著作権者に許諾をえなければならないとすると、気軽にブックオフには行けません。

この消尽理論については、国内消尽と国際消尽という考えかたがあります。我が国では、我が国の国内において適法に譲渡が行われた場合に著作権が消尽するという考え方をとらず、海外のどこかで適法に譲渡が行われた場合には消尽するという国際消尽の考え方を採用しています。

国際消尽で迷惑を被るのは、海外商品の正規ライセンシーです。国外から安く流入してくる並行輸入品は原則として止められません。正規ライセンシーは、ライセンサーに日本に流れないようにして欲しいと要望することしかできません。しかし、ライセンサーが、海外のライセンシーを重視し、日本市場はどうでもいいと思っていれば、ライセンサーの対応は期待ず、指をくわえて並行輸入を見ているしかできないという状況になってしまいます。

EUでは域内消尽という考えを採用しています。域外からの市場荒らしはやめて下さい、でも、EU域内では自由に物が移動できるようにしましょう、ということです。政策的に非常にわかりやすい考えです。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年05月21日17:55 ロースクールでの著作権講義(譲渡権・貸与権)

著作財産権の支分権は、条文にずらっと書いてあるので、具体的に考えないとイメージが沸かないと思います。

なので、貸本、レンタルレコード、古本屋、漫画喫茶で検討します。

まず、貸本屋。貸与権の侵害になる可能性があります。かつては、著作権法の附則4条の2に、貸与権の規定は書籍または雑誌の貸与には当分の間適用しないことが定められていました。この附則は、平成16年の法改正で廃止されました。そこで、適法に貸本業を営むためには、著作権者の許諾を受けるか、一般社団法人貸与権管理センターの管理する作品については同センターの許諾を受ける必要があります。

レンタルレコード店。貸与権の侵害になる可能性があります。問題となるのは、アーティストの貸与権(95条の3)と、レコード製作者の貸与権(97条の3)。ただ、貸与権は、国内で最初に販売された日から1年後には報酬請求権に転化するので、レンタルレコード店は、報酬さえ支払えば良いということになります。ただ、邦盤の場合、実際のレンタル禁止期間は、業界団体の合意で短縮されています。すぐにレンタルできるのはこのためです。

古本屋。譲渡権を侵害するかどうかが問題になりますが、譲渡権の侵害にはなりません。いったん権利者や権利者から許諾を受けた者によって販売された本についての譲渡権は消尽します。

漫喫(漫喫と書くといきなりおたくっぽくなる気がする)。その場で漫画を読ませているだけなので、譲渡権にも貸与権にも抵触しません。

弁護士 井奈波 朋子
インフォテック法律事務所

[▲上へ]


2010年05月14日15:51 ロースクールでの著作権講義(応用美術)

チョコエッグ事件について。

この事件では、お菓子のおまけでついてくるフィギュアの著作物性が問題となっています。

地裁判決で違和感を感じるのは、妖怪フィギュアや動物フィギュアの模型原型については、創作的表現であることを認めておきながら、著作権法2条2項の観点から検討をし直して、著作物性はない、とするダブルスタンダードをあからさまに採用していることです。なお、高裁も、地裁ほどあからさまでないにせよ、同じアプローチを採用しています。

そうすると、一品制作の動物フィギュアや妖怪フィギュアだったら著作権法2条2項で保護され、量産されるフィギュアのひな型なら保護が否定されることになってしまい、なんか変。つまり、同じ物でも用途によって保護されるかどうかが変わることに違和感があります。量産品でも純粋美術と同視できるような美的創作性がある場合には、保護されるというのも、よくわからない基準です。美的創作性の判断は、裁判官による判断になじむのでしょうか。

裁判所の見解も理由がないわけではなく、意匠法との棲み分けを重視しています。つまり、純粋美術=著作権、応用美術(一品制作や芸術性が高い物は別)=意匠という棲み分けです。ちなみに、フランスの著作権法では、まったく棲み分けていないので、日本とは対極にある考え方といえます。

この議論は奥が深いので、別の機会ということで・・・。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]


2010年05月12日19:42 ロースクールでの著作権講義(編集著作物)

編集物でその素材の選択または配列によって創作性を有するものは、著作物として保護されます(著作権法12条)。

そこで、何が「素材」に該当するのか、という問題は、選択または配列の創作性を判断するにあたって、とても重要です。しかし、このあたりの議論は明確ではないような印象があります。

色画用紙見本帳事件では、「当該編集物の用途、当該編集物における実際の表現形式等を総合して判断すべきである」と述べられてますが、総合判断っていうのは、あまり明確な基準にはなりません。あえて勝手に定義すると、編集の目的との関係で一定の共通点があるコンテンツ、とでもいえばいいのでしょうか。

その基準が明確になっていないので、裁判で、原告側の素材の特定がズレていたり(知恵蔵事件)、判決でも曖昧だったり(永禄建設事件)するんでしょうね。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]


2010年04月30日12:55 ロースクールでの著作権講義(不法行為との関係)

今回のお題は、著作権法で保護されない目的物を複製した場合、不法行為が成立するかどうか、という問題についてです。

不法行為の成立を否定した裁判例、認めた裁判例それぞれ見受けられますが、その境目は定かではありません。よっぽど悪質かどうか、という裁判所の印象によって、決まっているような気がします。

否定する見解の背景には、知的財産権による独占は経済活動の自由の例外であるという考えがあります。知的財産権は例外として認められている以上、知的財産権で保護されない目的物が複製されたとしても不法行為は成立しない、という考えです。

肯定する見解は、そのような原則は理解できるにしても、パクリが許されるのであれば、やはり経済活動に対する萎縮効果が生じてしまうので、不法行為の成立を認めるべきではないか、と考えます。

不正競争防止法は、後者の立場から発展してきた経緯がありますし、情報財の取引がますます盛んになるなか、これに対する手当がないのはパクった者勝ちという状況を跋扈させるように思われますので、私個人は、後者の見解をとりつつ基準をうち立てていくのが妥当ではないかと考えています。EUで、データベースからのデータの抜き取りについて、スイ・ジェネリス権を認めた、後者の流れからくるものと思います。

参考判例:ヨミウリ・オンライン事件(東京地裁平成16年3月24日判決、知財高裁平成17年10月6日判決)

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]


2010年04月27日11:02 ロースクールでの著作権講義(創作性と新規性)

著作物性が認められる要件(著作権法2条1項1号)の一つである創作性は、著作者の何らかの個性が発揮されているかどうかによって判断されるというのが、伝統的な考え方です。

それでは、新規性、独創性などの概念は、創作性とどのような関係にあるのでしょうか。改めてこれを調べてみると、意外と、人それぞれ、いろいろなことをいっているんだなぁ~と認識を新たにしました。

まず、新規性(かつて存在しないものを作ること)は創作性を認めるにあたって、必要ではないとされています。ところが、編集著作物などでは、創作性を認めるにあたって新規性が考慮されるかのような書き方をしているものも見受けられます。
新規性があれば、大抵の場合、個性が発揮されていると認められ、創作性を認める方向になると思います。逆に、新規でないからといって、個性が発揮されていないとは限らないので、新規性がないことが創作性を否定する理由にはなりません。要は、新規性があることは、創作性の立証をする一事実と考えられます。

次に、独創性について。独創性は、とってもオリジナルであることという意味に使われている場合と、人まねではなく自分で作ったことという意味で使われている場合があります。前者については、判決などで、独創性の発揮されたものであることは必要はないといわれているとおり、創作性を認めるために採用される概念ではありません。後者の意味であれば、自分で著作物を創作しないと著作者にもならないので当然の前提となる概念です。ただ、あまり独創性という言葉が、後者の意味で使われることはないように思います。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]


2010年04月19日14:59 ロースクールでの著作権講義(第3回目-創作性の高低Ⅰ)

第3回目に取り上げたホテル・ジャンキーズ事件に関して、裁判所(高裁)は、次のように述べています。

「創作性の高いものについては、少々表現に改変を加えても複製行為と評価すべき場合があるのに対し、創作性の低いものについては、複製行為と評価できるのはいわゆるデッドコピーについてのみであって、少し表現が変えられれば、もはや複製行為とは表現できない場合がある」

便宜上、このような考え方を相関関係論と呼びます。この相関関係論、もっともらしく聞こえますが、実際にそうでしょうか。

たとえば、「われと来て遊べや親のない雀」(小林一茶)を「われと来て遊べや親のないつばめ」に替えたら、デッドコピーではないから複製ではないということになるのでしょうか。

確かに、「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」という交通標語に対し、「ママの胸より チャイルドシート」という交通標語は、前者の著作権侵害にならないと判断した事件があります(東京地裁平成13年5月30日交通標語事件)。しかし、これは、前者の標語の創作性が低いからでしょうか。

この点はまた問題になりますので、続きはそのときに。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]


2010年04月15日11:40 ロースクールでの著作権講義(第2回めの補充)

第2回目の授業では、YOL事件とギャロップレーサー事件を発表していただきました。

ギャロップレーサー事件(最判平成16年2月13日百選第4版90事件)に関して、競走馬の名称が商標登録されていたら、商標権侵害が成立するのではないかという問題が提起されました。著作権の話からは離れますが、混乱しやすいところなので、この点について補足します。

本件は、有名な競走馬の名称をゲームで登場する馬の名称として使用したことが、競走馬に関するパブリシティ権を侵害するかどうかが問題となった事件で、いわゆる「物のパブリシティ権」の成否が議論されています。

商標権に関する問題ですが、この場合、ゲームという商品の出所を表示するために競走馬の名称を使用したわけではありません。したがって、たとえ、ゲームを指定商品として商標権をとっていたとしても、商標的使用に該当せず、商標権侵害は成立しません。

参考判例:UNDER THE SUN事件(東京地裁平成7年2月22日判決)
レコードを指定商品とする登録商標「UNDER THE SUN」がCDのタイトルに使用された事件で、CDの出所を表示するものではないと判断され、商標権侵害が否定されています。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]


2010年04月09日15:38 上智大学ロースクールでの授業開始にあたって

上智大学ロースクールでの授業開始にあたって上智大学ロースクールで著作権の授業を担当させていただくことになり、4月5日から授業を開始しました。

月曜の朝1限(9時15分~)という時間設定にもかかわらず、熱意をもって参加されている学生に圧倒され、わかりやすい講義を行わないといけないな、と改めて身を引き締めました。

弁護士なので、著作権の枠を超えて、実際の訴訟の生々しさ(?)などもお伝えできるような講義にしたいと思っています。

余談ながら、私の名字が珍しいせいか、配布されている書類に間違いが。正しくは下記のとおりです。ちなみに、この名字は岐阜市のいち地域出身者に見られるものです。

インフォテック法律事務所
弁護士 井奈波 朋子

[▲上へ]